
パープル・パープル・パープル
こんにちは、あきひさです。
縁あって紫に囲まれる生活になりました。
ノウタスの「パープルM」というぶどうブランドに携わる私は、日々紫色の商品を考えたり、デザインしていたりします。
また、最近ではぶどうDAOという新たなプロジェクトによる世界展開への挑戦も始まりました。
(https://maff.export-hr.maff.go.jp/project/grape-dao/)
そこでふと思いました。
日本では「紫」って高貴な色ですよね。
冠位十二階のトップは紫色でしたし、えらいお坊さんは紫の袈裟って聞いたことある。
でも世界に挑戦するなら、他の国ではどんなイメージなのか、調べてみないことにはですよね。
ということで、調べました!
せっかく調べたし、語りたい、誰か聞いてほしい!
Contents
紫はなぜ高貴な色なのか?

古今東西、有史以来、紫はなぜか「高貴な色」の代表格です。
偉い人ほど紫を身につけたがる…それどころか、庶民がうっかり身につけると怒られた歴史すらあります。
例えば古代ローマでは、皇帝以外が勝手に紫の服を着ることを禁じ、違反すれば死刑という法まであったとか。
どうしてここまで紫がもてはやされたのでしょうか。
理由はシンプル。
希少性です。
紫色の染料がとんでもなく貴重だったからにほかなりません。
古代フェニキア人の都市ティルス(現在のレバノン)で作られた「ティリアンパープル」という染料は、地中海産の巻貝から取れるわずかな粘液が原料でした。
一着分の布を染めるために気の遠くなるほど大量の貝が必要で、その数なんと25万匹以上とも言われます。
希少すぎて「染料は同じ重さの金と同価値」だったそうです 。
庶民には手が出ないどころか、紫染めのウールの値段は当時の一般人の年収をも上回ったとか。
つまり紫の衣をまとうこと自体が「そうです、私がお金持ちです」と言いながら歩くようなものだったわけです。
これでは皇帝が独占したくなるのも無理はありません。
紫が高貴とされたのは西洋だけではありません。
中国でも紫は皇帝にゆかりの色で、「紫禁城」なんて呼び名があるほど皇帝の象徴でした。
日本でも飛鳥・奈良時代から位の高い人ほど濃い紫の衣服を許され、平安貴族たちは競って美しい紫の衣を身に着けました。
『源氏物語』のヒロインが「紫の上」なんて雅号で呼ばれているのも、当時紫が高貴でめでたい色だったからでしょう。
しかし、長かった貴族によるパープル独り占め状態も、産業革命とともに終わりを迎えます。
技術革新で合成染料が生まれ、19世紀半ばにはイギリスの科学者パーキンによって安価な紫染料「モーブ」が発明されたのです。
こうして誰でも紫を楽しめるようになると、逆に「王様しか紫を着られない」というありがたみは薄れていきました。
現代ではファッションとして紫を着こなす人もいますが、「高貴だから」というより純粋に色彩の好みでしょう。
紫が自由化された結果、人類はようやく「紫のカーディガンを着ても処刑されない幸せ」を享受しているわけです。
世界の紫:高貴だけじゃない!?
紫ほど国や文化によってイメージが変わる色も珍しいかもしれません。
先ほどの通り、日本人にとって紫は高貴で上品、格式高い色で、古来より貴族が愛用してきました。
現代でも高級ブランドのテーマカラーや和装の晴れ着などに紫が使われ、「気品」や「風格」を演出します。
また中国でも皇帝の色だった歴史から、いまも紫は神聖で位の高い色とされています。
ところが、海外に目を転じると紫の顔がガラリと変わります。
欧米の一部地域では紫はむしろ悲しみのシンボル。
カトリック文化圏では典礼で紫が哀悼を示す色に使われ、葬儀の場にも登場します。
ブラジルやタイでは、葬儀で喪に服す人が紫の衣をまとう習慣もあるそうです。
同じ紫でも、「高貴なロイヤルパープル」と「哀しみの紫」では真逆の意味になりますね。
うっかり日本人感覚で「気品がある紫の花束を」とプレゼントしたら、相手の国によっては「なんて不吉な」とギョッとされる…なんて可能性もゼロではありません。
色彩のイメージとは実に厄介で面白いものです。
もっと言えば、紫には「神秘的」「創造的」「精神的」といったイメージもあります。
アートや音楽の世界ではアバンギャルドやエロティシズムの象徴として愛されてもいます。
伝説のロックバンド、ディープ・パープルなんて名前そのものですし、『パープル・レイン』というプリンスの名曲もありました。
ロックミュージシャンが紫の照明を背負ってギターソロをやりたがるのも、紫のもつ妖しい魅力ゆえでしょう。
紫は人類にとって、高貴であり悲しみでもであり、アバンギャルドでクリエイティブでエロティシズムでもある――まさに奥深い、ディープ・パープルなのです。
なぜおばあちゃんは髪を紫に染めるのか?
ところで、日本の街角で忘れてはならない紫の話題があります。
そう、おしゃれなおばあちゃんの紫色の髪です。子どもの頃、「どうしておばあちゃんの髪は紫なんだろう?」と思った人も多いのではないでしょうか。
畏れ多い皇帝の色が大好きなおばあちゃんの定番ヘアカラーになるとは、これもまた不思議な現象です。
一体なぜなのでしょう?
理由を知れば「なるほど!」です。
実は、日本人の白髪はそのままだと黄ばんで見えがちで、ツヤがなく綺麗に見えないことがあります。
そこで美容師さんは補色の紫を薄く入れて白髪の黄みを飛ばし、上品なシルバーグレーに見せようとするのだとか。
要は白髪をより白く美しく魅せるテクニックなんですね。
ところが、おばあちゃん達もおしゃれに貪欲ですから、染め直しを繰り返すうちに、気づけばしっかりあの紫色のヘアスタイルに。
ずいぶん攻めた紫になったなと思っても、古来からの高貴な色をまとって、おやおや?、むしろなんだか品があるようにみえる。
そう、紫ヘアは美容テクと歴史的憧憬の融合とも言えるのです。
染め上がれパープル
ここまで見てきたように、紫色というのは実に奥深い色です。
高貴さ、神秘、哀しみ、アバンギャルド、妖艶さに加え、シルバーライフのおしゃれ心――これだけ多彩な意味合いを持っているのですから驚きです。
そんな奥深い紫に日々向き合っている私たちパープルMは、ぶどうを通じてこの色の魅力を皆さんに届けたいと願っています。
私たちの育てている紫のぶどうにも、そんな「ディープ・パープル」をぎゅっと詰め込んでいきたいと思っています。
みなさんも、もう髪の先までパープルに染まりたくなってきたのではないでしょうか?
染まりましょう。
染め上がりましょう。
パープルバウム、1200円から販売中です。
https://www.cocotomobaum.jp/categories/6344214