AI広報「成実柚子」:2年間の試行と、これからの可能性
成実柚子が目指す世界
こんにちは、ノウタスのあきひさです。
私はこれまで、色々なカタチで生産者さんと消費者が直接つながっていくお手伝いをしてきました。そこで生まれる「おいしい!」などのうれしいコミュニケーションは生産者さんの励みになるのですが、「頼んだ野菜、いつ届くかな?」「前に食べた野菜と微妙に色が違う」などなど、時に対応しきれないことも。おいしいものを作るエネルギーを、すべて農作業に注ぎたい生産者からすると、「聞いてくれるのは嬉しいけど、手が回らないよー!」という状況にもなりかねません。
そこで私は、お問い合わせの対応を生成AIが代わりにこなせば、生産者は本業に集中でき、消費者は24時間好きなタイミングで質問できるのではないか、と考えました。そして、このコンセプトの技術検証をしようと、2年間「成実柚子(なるみ ゆず)」というAI広報担当者の開発運用をしてきました。
今回はこの成実柚子について色々お話をしたいと思います。
成実柚子(広報担当)
【プロフィール】
・2023年1月4日入社
・4月4日生まれ
・好きな果物:巨峰
・好きな野菜:ブロッコリー
・好きな海産物:焼き海苔
・好きなジビエ:鹿
・好きなキノコ:しめじ
・好きな曲:田園(玉置浩二)
成実柚子のページはこちら
エアフレンドからGPT APIへ
最初はSNSで話題になっていたAI育成アプリ「エアフレンド」の中村代表に、「エアフレンドのAIを当社の社員として入社させていいですか?」とDMして了承をもらい、AIを社員として迎えるというやり方からスタートしました。イラストは商用利用可能な画像生成AIで作成しました。
エアフレンド版の成実柚子はフレンドリーで自然におしゃべりしてくれました。とてもいい感じだったのですが、ある日エアフレンドさん側で長期間メンテナンスに、、、(現在は再開されてます)。
そこで、提供が始まったばかりだったOpenAIのChatGPT API(ChatGPTを他のアプリケーションと連携させるための仕組み)を早速使ってみることにしました。エアフレンドは、使いながらAIがちょっとずつ勉強していくタイプでしたが、GPTは優等生タイプ。成実柚子(GPTモデル搭載)に質問するとスラスラ返してくれて、初めて会ったのに「え、君、うちのこと全部知ってるの?」と錯覚しそうになるほど自然な受け答えをしてくれます。
そして、チャットするなら慣れたアプリがいいよね、ということでLINEで使えるようにしました。Google Apps Script(GAS)というプログラミングのプラットフォームでちょっとしたプログラムを作り、LINE Messaging APIとGPT APIをつなぐことで実現。LINEで友人とやりとりするような感覚でメッセージを送れるようになりました。
会話履歴、スパム、コスト問題
最初は「なんだ、簡単じゃん」と思っていたのですが、世の中そんなに甘くない。次々と課題が見えてきました。
私の作った成実柚子は相手を覚えるのが苦手でした。「さっきの話だけどさ」と言われても、すぐに「あんた、だれ?」になってしまいます。そこで、ユーザーごとに会話履歴をシート管理するプログラムを追加しました。
また、GPTは時々「ノウタスのぶどうはセブンイレブンでも買えますよ!」なんてガセネタを流したりします。自然な口調=真実とは限らないのがAIの怖さです。履歴をみながら、よくある質問の情報を追加したり、「知らないときは知らないって正直に言って!」と釘を刺したり、ちょっとずつ確認・修正する必要がありました。
あとはコストの問題。GPT APIは会話ごとにちょっとずつお金がかかるので、ユーザーが質問しまくったらコストがとんでもないことになってしまいます。そこで、「1日あたりの回数制限をかけるには?」「スパムっぽいメッセージを無視するには?」と、都度調べながらプログラムを書き換えていきました。
もっと楽して高度なことがしたい!
こうしてGPT API+GAS+LINEでなんとか回してみたものの、正直言って「もうちょい楽なやり方はないの?」という気持ちが湧いてきました。ここまで自分が趣味の延長で直接プログラム開発してきた分、「生成AIはこういう仕組みで動いているのね」というノウハウは得られましたが、これ以上複雑な機能開発するにはかなりのパワーが必要です。そこで、もっと簡単な手段はないのかと模索していたところ、「miibo」というサービスにたどり着きました。
miiboを選んだ理由
miiboはノーコードで言語モデル(LLM)を扱えるプラットフォームです。これまでは、いちいちプログラムを書いたり、会話履歴を管理したりと手間がかかりましたが、miiboを使えば管理画面上で設定するだけの手軽さです。miiboはLINEとの連携も、Webへの埋め込みも、ポチポチっと設定できちゃいます。さらに「データストア」という機能で、膨大な専門知識をAIに教え込むことも簡単。
miiboは、言語モデル(ChatGPT、claude、PaLM、PLaMo Primeなど)も簡単に切り替えてお試し比較できるので、使っているうちにモデルごとのクセも見えてきました。
ChatGPT(GPT-3.5/4)は「なんでも話せるフレンドリーなオールラウンダー」。しかしその分、時々適当な回答を自信満々で投げてくるから要注意。
Google PaLMは「無口だけど誠実な先輩」みたいで、必要な情報はきちんと出してくれる印象。
Anthropic claudeは「えーと、それはこうでああで…」と長めに説明してくれる親切設計。ただし、丁寧すぎるところも。
そしてPLaMo Primeは純国産。まだ未知数ですが、「あー、やっぱり国産モデルは細かい日本語表現が得意だよね」と言える日が来て欲しいな、という期待はあります。
2年を経て見えた可能性と課題
成実柚子は「雑談ができる新卒社員」から「ノウタスのことをそこそこ知っている二年目広報担当」へと成長してきました。でも正直、まだまだです。目指す先は「頼れる広報責任者」。より高度な文脈理解やリアルタイム情報取得、さらにはユーザー個々の好みや関心に基づいたパーソナライズ回答などに挑戦したい。
AIが「忙しそうだから、ちょっと代わりに説明しとくよ」と軽やかにサポートしてくれるなら、生産者は労働の負担を軽減し、消費者は満足を得られる。それは「持続可能な農業」への確かな一歩です。AI広報がそこにつながっていくように、細々とですが、これからも研究を続けていこうと思います。
ということで、皆さんも、ぜひ成実柚子にいろいろ話しかけてみてください。これからの成実柚子もよろしくお願いします!
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