
宝くじを当てる確率で生まれた”シャインマスカット”
みなさんこんにちは、ぶどう農家のひろゆきです。
秋を代表する果物の一つシャインマスカット。黄緑に輝く粒は、糖度が高く酸味は控えめで、しかも種なしで皮ごと食べられる。
日本が生み出して、世界で大人気のぶどう”シャインマスカット”の歴史についてぶどう農家目線でお伝えしたいと思います。
Contents
長い年月をかけた品種改良
シャインマスカットの開発は1980年代、広島にある日本の国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)」で品種改良が開始されました。
「安芸津21号」と「白南」を交配し、そこから数百の苗木が育てられ、その中から選ばれた1本がシャインマスカットへとつながります。「安芸津21号」の交配は1970年代までさかのぼり、シャインマスカットが品種登録が行われた2006年までには30年以上の年月がかかったと言われています。
果樹の品種改良は、一粒の種の性質を知るまでに数年かかり、それを何百通りも繰り返してようやく形になります。シャインマスカットは、そうした長い研究と試験の積み重ねの結果として誕生したのです。

栽培と消費の両面で革命的な品種
シャインマスカットの特徴は「栽培しやすさ」と「食べやすさ」の両立にあります。雨が多い日本では病気や実割れのリスクが高いのですが、シャインマスカットは比較的安定して育ちやすい。
農家にとっては経営の安定につながる品種でした。
一方で消費者にとっては「皮ごと食べられる」「種がなくて食べやすい」「香りが良く甘い」という点が評価され、人気が一気に広がりました。
その結果、全国的に栽培面積も拡大し、ぶどう農家の経営に大きな影響を与えています。
品種を守る取り組み
人気の高まりとともに、海外流出の課題も出てきました。その対策として、日本では品種名とブランド名を分けて登録し、知的財産を守る工夫が行われています。
たとえば長野県生まれの赤ぶどう「クイーンルージュ®︎」。
品種名は「長果G11」、商標名は「クイーンルージュ®︎」と分けて管理することで、日本ブランドの価値を守っています。
こうした取り組みや法制度の強化によって、育種者の権利を守り、未来へとつなぐ仕組みが整いつつあります。
果物文化の広がり
シャインマスカットの登場は、ぶどう全体の消費を広げるきっかけにもなりました。
「シャインがおいしかったから、次はナガノパープルも」「赤いぶどうも試してみたい」など、他の品種にも関心が集まっています。
さらにこの流れは、ぶどうに限らずりんごや桃、柿といった果物の開発・販売にも良い影響を与え、日本の果物文化を一層豊かにしています。

おわりに
シャインマスカットは、30年以上の研究と試験を経て生まれた品種です。
ぶどう農家にとっては経営を支える存在となり、消費者にとっては新しい食べ方を広め、いまや世界からも評価される“日本の宝”となりました。
この秋の旬を迎える時期、シャインマスカットをはじめとするぶどうやりんご、桃などの果物を楽しんでいただければと思います。
その一粒一玉には、研究者と農家の努力が込められています。