
最近シャインマスカットが安いのはなぜ?知っておきたい2つの理由
長野でぶどうを専門に栽培している、ぶどう農家のひろゆきです!
ここ数年、スーパーなどでシャインマスカットを見かける機会がぐっと増えましたよね。
「昔は1房2,000円以上していたのに、最近は安くなったな…」と感じる方も多いのではないでしょうか。

特にここ最近は1房1000円以下で販売されているスーパーもあり、
「海外からの輸入なの?」「おいしくないシャインじゃないの?」と質問を受けることもしばしばです。
では、高級果物店で1房1万円以上するシャインマスカットと、スーパーで数百円で売られているシャインマスカットは何が違うのでしょうか?今回は現役ぶどう農家である私が、市場データや現場の実感を交えながら、シャインマスカットの価格が下がっている背景と、 季節ごとの味わいの違いを農家目線でご紹介します。

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理由1:生産量が急増している
まず値段が下がっている一番大きな理由は、全国でシャインマスカットを栽培する農家が急増したことです。
シャインマスカットの栽培面積は
2010年→ 2020年には10倍以上にも拡大したとも言われているます。
市場に出回る量が増えれば、当然ながら価格は下がりやすくなります。
ちなみに、シャインマスカットは海外から輸入は一切なく、全て国産品です!海外産があれば違法なので買わないようにご注意ください!
理由2:猛暑による“産地リレー”の崩壊と全国一斉出荷
かつては、桜前線のように 岡山 → 山梨 → 長野 → 山形 と、西日本から東日本へと 産地がリレーする形で順番に出荷されていました。
この「産地リレー」があったことで、産地ごとに出荷時期がずれ、需給のバランスが取れていたのです。
しかし、近年は高温の影響で全国的に生育が早まり、9月上旬に全国の産地から一斉に出荷が集中するようになりました。
その結果、供給が一気に膨らみ、市場価格が急落する「価格の暴落」が起きやすくなっています。
日本最大の青果市場である東京青果の相場表でも実際9月1週目は平均価格が平年比較を下回っています。
2024年9月5日:2,100円/kg → 2025年:1,500円/kg と下がっており、特に9月に価格が落ち込みやすい傾向がデータでも確認されています。ただ、その後は緩やかに価格は回復傾向にあり、10月以降は供給も安定して2,000円/kg程度の平年並みの価格で推しています。
品質と味わいの幅、バラツキが広がっている
生産量が増えたことで、品質にも幅が生まれました。
特にシャインマスカットは、巨峰やナガノパープルのように色がついて完熟がわかる黒系・赤系とは違い、 着色しない“白ぶどう”と呼ばれています(実際の色は緑ですが)。
このため、色では味の違いが分かりにくく、まったく味のしない低品質のぶどうも市場に増えています。
また、高値で取引されているからと、専門的な知識がないまま栽培を始める農家が増えたことも、 品質のばらつきと供給量の増加につながっています。
- 粒が大きく糖度の高い「秀品」
- 少し小ぶりでも味がしっかりした「良品」
- 形が不揃い・裂果などの「訳あり」
市場価格が下がっていても、それは必ずしも「質が落ちた」という意味ではありません。
小粒でも完熟した房は、驚くほど甘く、香りも豊かです。
一方で、数の増加は品質の低下にもなり、高品質なものや有名産地・有名農家のものはブランド化が進み、高値で取引されることも少なくありません。生産量が増える中で、品質のばらつきが大きくなり、最高峰のシャインマスカットを求める消費者も増えており、技術やこだわりを持つ農家・地域は確かなブランドとして有名果物店のショーケースでキラキラ輝く宝石にのように展示され、評価される時代になっています。
時期によって味わいがまったく違う
「シャインマスカット」と一口に言っても、収穫時期や産地によって味わいが大きく変わるのも魅力のひとつです。私が栽培している長野県須坂市では9月と10月それぞれ全く違う味わいになります。
- 9月:フレッシュで爽やかな香りと味わい
- 10月:濃厚な甘みと深いコクが際立つ味わい
また、シャインマスカットは貯蔵性にも優れており、年末から年明けにかけても市場に並びます。
特に10月の長野県産は、昼夜の寒暖差の影響で香りと甘みがしっかりとのってくる時期。
「特別だから」というよりも、自然条件が味を引き出すタイミングとして評価されています。
実際に食べ比べると、味の変化を感じる方も多いはずです。
お手頃だからこそ、食べ比べを楽しもう
市場価格が落ち着いてきた今こそ、いろいろな産地・時期・作り手のシャインマスカットを味わってみる絶好のタイミングです。
9月の爽やかさ、10月の深い甘み、有名産地やブランド農家のこだわりの味…。
同じ品種でも、まるで別の果物のような発見があります。
お手頃な価格だからこそ、ぜひ“食べ比べ”を楽しんでみてください。
まとめ
シャインマスカットの価格が下がっているのは、単なる“値崩れ”ではありません。
背景には、次のような複数の要因が重なっています。
- 生産量の急増
- 産地リレーの崩れと出荷集中
- 品質・味わいの幅の拡大
- ブランド化と市場の成熟
- 消費者の慣れとニーズの多様化
そして今は、味が最も乗る季節。
気軽に手に取りながら、時期や産地、ブランドによる味わいの違いを楽しんでみてください。
編集後記(ひろゆき)
“ブランド”と聞くと高級なイメージがありますが、旬の時期に合わせて食べると、より深く味の違いを楽しめます。
それぞれの農家や産地の努力や工夫が詰まっているので、ぜひ秋のシャインマスカット、じっくり味わってみてください。