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ノウタス クラタペッパー

カンボジア胡椒(コショウ)の生きる伝説、クラタペッパー倉田博伸氏に学ぶ

カンボジア在住のRyotaです。

カンボジアは農業が産業全体に占める割合がとても大きく(全体の四分の一)ほどあり、とても農業が盛んな国です。お米がたくさんとれる、美味しいフルーツがいつでも食べられる、そんなイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか?そしてそれは事実です。

しかし、カンボジアが過去にコショウの名産地であったこと、一度はその栽培が途絶えたこと、近年また復興し年間70トンもの輸出をできる国になったこと、そしてその復興に一人の日本人の存在があったこと、はあまり知られていません。

カンボジアコショウの生きる伝説、クラタペッパー倉田博伸氏のお話をもとに、今回はコショウについて考えてみます!

カンボジアコショウの歴史、倉田さんの歴史

コショウはインドが原産とされ、紀元前4000年頃には栽培が行われ、ギリシャで薬用・食用として使用されていたという記録が残っています。その希少性から、世界史のいたるところでコショウの話が出てくるのは周知のとおりです。大航海時代がはじまった一つの原因はコショウでもあります。

カンボジアでコショウが栽培されていた最古の記録は、1290年代に中国の周達観の紀行文『真臘風土記(しんろうふどき)』にある一文「胡椒も時々またある。籐にまつわって生じ、累々とつながって緑草の種子のようである。その生で青い実はいっそう辛い」であり、700年前には既にカンボジアでコショウが栽培されていたことがわかります。

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以来、カンボジアのコショウづくりは自然栽培の伝統的な農法で行われ高品質で知られていました。しかし長く続いた内戦によりほとんどのコショウ畑が壊滅。またノウハウも消滅した状態になっていました。カンボジアのコショウづくりは悲しい近代史の中に埋もれていたのです。

高校時代からカンボジアに夢中になりカンボジアおたくだった倉田さんは、まずは1992年からNGOのボランティアとしてカンボジアでの人生をスタートさせます。

そして数奇な運命に導かれるように、カンボジアコショウについての幻の資料を大叔父から託され、カンボジアコショウが過去に「世界一のクオリティ」と評されていたことを知ることになります。ここから倉田さんのカンボジアコショウの復興がはじまります。

※このあたりのエピソードはこの本が詳しい『農業フロンティア 越境するネクストファーマーズ(文春新書 1336)

  • わずかに残されたコショウの木からコショウ畑を開始
  • 全く売れない時期
  • カンボジアに訪れた秋篠宮殿下へのコショウの献上
  • お土産品としての販路の発見、拡大
  • ヨーロッパ、有名シェフからの高い評価
  • フランス開発庁のコショウ復興プロジェクトへの全面協力、はずされたはしご
  • 農薬を一切つかわない自然農法へのこだわり、完熟胡椒の発明

ここでは到底書ききれないほどの約30年の歴史です。

まさに紆余曲折、山谷ありながらも、倉田さんが復興の一歩を踏み出し、まさに人生をかけるカンボジアのコショウは、世界50カ国以上に年間約70トン(2020年)も出荷されるほどの産業に成長。

カンボジアにとっての一産業が復興されたのです。

ノウタス クラタペッパー

コショウの栽培方法

さて、どの家庭にもあるコショウ。どうやって栽培されているか知っていますか?倉田さんからいただいた資料をもとに少し解説していきます。

胡椒は、つる性の植物です。添え木を使って成長し、収穫ができるまで5〜6年かかります。りんごやみかんが3~4年。ぶどうが2~3年ですから、かなり長い期間を要します。

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胡椒の白い小さな花が咲く頃に、花をなめて結実を妨げるシュモクバエが発生しますがハエが残した花こそが大きな実となります。自然の摘粒作業(間引き作業)といえます。生産量を増やすために、薬剤でハエを防ぐ農法もありますが、クラタペッパーでは大粒コショウを栽培するために、自然に育てます。

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花が咲いてから実が熟すまで8ヶ月ほどかかります。収穫時期は年に一度。3月頃です。コショウの果実は繊細で、現在でも収穫方法は100%手摘みです。

ノウタス クラタペッパー

手摘みしたコショウの果実は、3月のカンボジアの強い日差しで天日干しし、スパイスとしてのコショウに変化します。クラタペッパーでは、その後一粒一粒を目でみて手で選別し、果肉のしっかり詰まった大粒な実だけを真空パッキングしてお客様に届けています。

ノウタス クラタペッパー
ノウタス クラタペッパー

長い期間と膨大な手作業。そして果樹の繊細さ。コショウ栽培の難しさを痛感します。普段何気なくつかっているコショウに、じわじわとありがたみが湧いてきます。

倉田さんのメッセージ

内戦によって断絶されていたカンボジアシルクの復興と活性化に貢献した、IKTT クメール伝統織物研究所の森本喜久男さん(故人)に聞いたことがあるんです。「どうしたら伝統を守れますか」と。その時に森本さんに言われた言葉が今でも私の指針になっています。

「伝統は守るものではなく、創るもの」

カンボジアコショウの品質を支える自然農法の研究を深め続け、大胆に新しい伝統を継いでいきたいと考えています。

クラタペッパーを経験してみたい方へ!

倉田さんがいつもおっしゃるのは「コショウは果実」ということです。たしかに栽培方法やスケジュールを聞いていると、果実の代表格「ぶどう」のそれに似ています。

徹底した自然農法でつくられたクラタペッパーはシンプルに「おいしい!」のです。楽しみ方も無限大。赤ワインにコショウを挽くなんて楽しみ方も倉田さんに教えてもらいました。奥深きコショウの深淵を覗きたい方は、ぜひ倉田さんのコショウをご賞味あれ!

クラタペッパーオンラインストア

https://kuratapepper.stores.jp

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編集後記

倉田さんの話は、コショウの奥深さにふれる機会となりコショウの楽しみを拡げてくれました。

また、「豊かさ」について深く考えるきっかけにもなりました。近代的な定義による豊かさ、利便性を追求することで発生する問題というものがあります(例えば、貯水池を埋め立てて住宅用地にしたことによってプノンペン市内の洪水が増えてしまったことなど)。

自然体の豊かさを感じ育むために、すなわち人間らしく生きるために。農業というのはとてもよいフィールドだと思います。ノウタスとして皆さんの人生に農を足す活動に、あらためて襟を正す想いです。

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